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自己抑制・自己主張の二つの側面が重要な「感情制御力」を養うには、大人の共感的な言葉による「感情の社会化」が必要です

子どもは成長するにつれて、社会と触れ合う機会が増えていきます。そんな中で必要になってくるのは、自身で感情をコントロールする力、すなわち、感情制御力です。

子どもが生涯を通し、社会の中で健康的に生きていくためとても大切な感情制御力――この能力は、実はひとりきりで身につけていけるものではありません。

子どもが感情制御力を獲得していくためには、大人による「感情の社会化」という手助けが必要なのです。

自己主張と自己抑制

まず、感情制御力とは、状況に応じて、自己主張自己抑制のふたつを使い分けることができる力のことである、ということを覚えておきましょう。

制御とはつまり、コントロールのことであり、抑制のみのことを指すわけではありません。「楽しいよ! 遊ぼう!」「寂しいよ、抱きしめて!」という主張と、「楽しいけど今は我慢」「寂しいけど今は我慢」という抑制のどちらをも、状況を見て適切に判断し、使い分けることこそが、感情のコントロールであるのです。

乳幼児期、幼児期において、これら自己主張と自己抑制は、それぞれ別々に発達していきます。ですが、どちらも目指すところは、誰か他の人の助けを必要としない、自分自身の力による自己のコントロールを可能にする、ということです。

では、自己コントロールを可能にするためには、一体どのような力を養っていけばよいのでしょう。

情動焦点型から問題焦点型へ

自己コントロール能力の養い方の前に、感情制御の方法について、ほんの少し触れておきます。

何か問題が起き、不快感情が芽生えたときの対処法に、情動焦点型コーピング問題焦点型コーピングというものがあります。

<情動焦点型コーピング>
昂ぶった感情や、不快な感情そのものを落ち着かせるための対処行動。おっぱいを吸ったり、お気に入りのタオルやぬいぐるみなどを持ったりして感情を制御する。

子どもが特別に愛着を持ち、肌身離さず持つことで安心感を得るようなもののことを、移行対象と言います。移行対象を持つということは、子どもが自ら、自分自身の感情への対処をしようとしていることの表れでもあり、子どもの自律性の発達という面では良い経験であるとも言われています。

<問題焦点型コーピング>
不快な感情や状況を作り出す原因となった問題を、直接解決しようする対処行動。

子どもは成長していくにつれ、だんだん、情動焦点型から問題焦点型へと行動を移行させていきます。おもちゃを落としてしまい泣き叫び、抱きしめてもらうことで落ち着きを取り戻していた乳幼児期から、落としたおもちゃを拾う、「拾って」と言うなど、認知能力・言語能力・運動能力の発達により、感情をコントロールするために行動することができるようになっていくのです。

さて、けれども、そういった行動によるコントロールを行うためには、大前提として、子どもが自分自身で、自分の感情を自覚している必要があります。

では、ここで本題に戻りましょう。

子どもが感情をコントロールするのに必要な、「自分の感情を自覚する」という能力。実は、子どもがこの能力を得ていくためには、養育者である私たち、大人の助けが必要なのです。

大人が正しく共感的な言葉をかけることで、感情を自覚する能力が養われる

感情制御力は、言ってみれば社会的な発達のひとつです。そしてこれは、自然に身についていくものではなく、養育によって育まれるものでもあります。

先にも触れたように、感情を制御するためには、まず、感情を自覚する能力が必要です。自分で自分の感情を正しく理解しなくては、感情をしっかりとコントロールすることはできません。

その、感情を自覚する能力を育てるために必要な手助けというのが、すなわち、大人による正しい「共感的な言葉」なのです。

何か問題が生じたとき、子どもが感じていると考えられる感情に大人が共感的な言葉をかけることで、子どもの「感情の社会化」が行われます。

感情の社会化とは、何らかのきっかけにより自分の中に生まれた感情エネルギーを、正しい言葉に変換して、自分の外へ発信していくことを指します。これは子どもに限った話ではなく、言葉と言う形で社会化された感情が誰かに共感してもらえたり、受け止めてもらえたりするという経験を重ねていくことで、私たち人間は、感情をコントロールする能力を身につけていくのです。

しかし、私たち大人は、子どもの「楽しい」「嬉しい」「好き」というプラスの感情には共感的に関わるのに対し、「怖い」「悲しい」「嫌い」といったマイナスの感情には、否定的に関わってしまうという傾向があります。これは私たちが、子どもに対し「良い子に育ってほしい」という願いを持っているからこそなのですが、なかなか共感してもらえることがない不快感情は、社会化が起こりにくくなります。

不快感情の社会化が充分に行われなかった場合、ネガティブな感情が心の中にあったとしても、それらを表す言葉と感情が適切に繋がっていないという状況が生まれてしまいます。

感情を適切に言語化することができないということは、感情の強いエネルギーが、身体内に内在することになるということです。そうすると、それら閉じ込められたエネルギーはやがて、暴言や暴力など、不適切な対処として表に溢れ出てくることになるのです。

ネガティブな感情を社会化するために ~感情と行動の区別~

不適切な形で感情エネルギーが表出してしまうようなことにならぬよう、子どもの不快感情の社会化を促してあげることが大切です。

ですが、不快感情の社会化においては、「感情と行動をわけるという意識を持って関わる」ということを、注意しなくてはなりません。
感情には共感が必要ですが、不適切な行動には適切な指導をする必要があるのです。

何か問題が起きたときには、まず、子どもの自由な言葉で、感情を表現させてあげましょう。そして、そこから、子どもがどんな感情を抱いているのかを推察し、それを正しく言葉に変換してあげます。そうして、子どもの昂ぶった不快感情が落ち着くのを待ってから、指導として伝えるべきことを伝える、ということが大切になります。

夕ご飯を作っている最中に、子どもがしつこく、積み木で遊ぼう遊ぼうと声をかけて、最終的には積み木を投げてしまったとします。
そのとき、積み木を投げたことを叱りつける前に、まずは「どうして投げてしまったの?」と子どもに聞くという姿勢をとりましょう。そして、「遊びたかった」「遊んでくれなかった」と訴える子どもの声を聞いたあと、「寂しかったんだね」「遊んでもらえなくて、悲しかったね」と子どもの感情を言語化することで共感してあげます。共感により、子どもの感情が落ち着いて来たら、「そういうときは、寂しいって言おうね。そうしたら、ご飯を作りながら一緒に歌ったり、他にも方法を考えられるよ。おもちゃを投げたら危ないし、投げられたら、おもちゃもきっと寂しい気持ちになるんじゃないかな」と、不快感情に対する、具体的な対処法を伝えます。

こういった、共感と、行動の指導を繰り返すことで、子どもは、生まれてしまった不快感情を理解し、その感情へどう対処をしていけば良いのかを学んでいきます。対処可能な感情は、爆発してしまう前に、きちんと解決したり伝えたりすることができるでしょう。共感してもらえるという安心感もあることで、状況に応じ、感情を表現したり、抑制したりを使い分けることが可能になるのです。

上手に感情をコントロールすることで、抑制すべきときには抑制し、主張すべきところでは主張する――そんな健康的な社会生活は、解放的な心を育むことでしょう。解放的な心は、自由な発想や豊かな創造力を生み出します。

自身の感情を自覚して、感情を社会化させるということは、大人にとっても難しいことであるかもしれません。けれども、私たちは子どもと向かい合うことにより、私たち自身の感情とも向かい合うという機会を得られます。子どもの感情の社会化を行っていくことは、私たち自身が養育者として、そして社会の一員として成長していくための、ひとつのプロセスでもあるのではないでしょうか。

(2015/08/24追記)
幼児の自己制御の発達及び文化的特徴との関連 日中の比較を中心に
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第56集 第1号に自己制御に関する概観、考察、展望が載っていました、大変興味深い資料ですので、ご興味のある方は是非ご一読ください。

幼児期における自己制御機能(自己主張・自己抑制)の発達 親および教師による評定の縦断データの分析を通して
こちらには群馬大学教育学部紀要 人文・社会科学編の、教育学者である松永あけみさんによる検討が記されています。

日本における自己制御機能の研究は、心理学者で東京女子大学名誉教授である柏木恵子さんによる、自己制御には自己抑制だけでなく自己主張的側面が重要だという指摘(1988年)以来、この二つの側面からの研究が中心となっている、ということも説明がなされています。

柏木恵子さんは、発達心理学などの著作を数多く持ち、2011年には、旭日中綬章も受章されている方です。

ABOUT THE AUTHOR

土下すわる
フリーライター。1985年生まれ。記事:海外デザインの紹介記事など。 小説:『ぬいぐるみの父』幻創文庫(PN藤村悠生) PBW:『三千界のアバター』(株)フロンティアワークス(GM藤村悠生)
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